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I歯科医院の高楊枝通信。

I歯科医院の高楊枝通信。

歯の電気伝導経路(遠心歯根面カリエス)1

今日は(以前にも書き込んだことがあると思うが)同じ歯でも遠心:Distal:奥の方が虫歯になりやすい。
その話をしよう。
一般には、この現象の理由は分かっていない。奥の方が磨きにくいから?とかマヌケな説明をするのが精々だ。磨きにくいのはどこだって同じだろう。

電気化学の前にはっきりしておかねばならないのは、
歯つまりハイドロキシアパタイトは水素イオン:プロトン:H+の伝導性物質だと言うことだ。電子は通さない。
H+はプラスイオンなので、マイナス電位の方に動く(つまり伝導する)。

口腔内だけではないのだが、酸素濃度勾配があると(つまり酸素が薄いところと濃いところがあると)電位差が発生する。酸素濃度が低い方がマイナス電位になる。この現象は酸素濃淡電池と呼ばれることもある。

一方口腔内では口の奥の方が手前側(つまり口に近い方)より酸素濃度は低い(つまり酸素は少ない)。奥の方:遠心:Dの方がマイナスになる。このことをイラストにしてみた。H+は歯の中を奥の方に向かって伝導する。細かい話はここではしないが、H+は歯と歯のコンタクトポイント(接触点)を通って、奥の方に抜ける。
この時H+の流れはコンタクトポイントに集中する。

この時コンタクトポイントで何が起こるのか?

電気化学的な虫歯とは何かと言うと、歯(ハイドロキシアパタイト)をH+が通り抜けるときにハイドロキシアパタイト結晶中のCa(カルシウム)から電子を奪って水素ガスになりCaはCa2+(カルシウムイオン)になり歯から溶け出す。
こうしてハイドロキシアパタイトの結晶構造が崩壊する。これが虫歯というわけだ。



次回はその具体例だ。


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